君の指先

僕は君の手を握った

唐突に



僕と君は

友達でも恋人でもなかったから

そんなことは起こらないはずだった



君の白く長い手指の先が

赤く染まっていた



僕は何も考えていなかった

ただ君の悴んだ指先が

とても寒そうだったんだ



僕は何も考えていなかった

君の指先の冷たさを感じて

戸惑う自分に気付いた



君は無邪気に「あったかい」と言った

二人の手はすぐに離れた

君と僕とは

友達でも恋人でもなかったから



シルクの生地を滑らせるように

冷たさと滑らかさを僕の指先に残して

君の指先は離れていった