万事休す


本当に無理なのか

もう打つ手はないのか

このまま終わってしまうのか


もう一度 よく見ろ

もう一度 よく見るんだ


何かないか

糸口は ないか

何かないのか

どこかに きっかけは ないのか



まだ動くな

まだ動いちゃいけない


もっと 考えろ

もっとよく考えるんだ



最後の一手

もう後はない

最後の一手

泣こうが喚こうが後はない



もう無理だ

もうこれしかない

それ以外、考えられない

これ以上、思いつかない



心を決めて さあ やるんだ




      






      ~ game over ~





あぁ~
終わっちゃった~

桜貝の恋

外で待ち合わせて 少し早めのランチ

行くあてもなく 人混みの中をなんとなく歩いて

帰り着くあなたの部屋



あなたは黙ってカギを開け

あなたに続いて部屋に入った



真夏の昼下がりの強すぎる陽射しが

室内の温度を上げ

二人の体温を上げていく




小さな部屋の真ん中で

あなたはふいに立ち止まり

振り返って私を抱いた

やわらかく

やさしく




あなたはいつもそう

大切なものを扱うように

大切なものを壊さないように

そっと そおっと 私に触れる




私はあなたの首に腕をまわして

少しの隙間もないくらい

あなたと重なる





ねぇ

不安なの





どうしてこんなに不安なのか

何がそんなに不安なのか

自分でもわからない



あなたと一緒にいるのに

あなたの腕の中にいるのに





もっと強く抱きしめて





あなたの腕に力がこもる





もっと





もっと






だんだん

だんだん

腕の力が強まって

骨が軋んで





もっと





肺が圧迫されて

魂を吐き出すように

最後の吐息が口から漏れた






もっと





声にならない吐息でつぶやく









これ以上やったら骨が折れちゃうよ






あなたは静かに微笑んで

両の腕の 力を抜いた








骨が折れてもいいの

潰して

壊して

あなたの腕で

ワクワク キラキラ

僕ね

この前

歩けるようになったんだよ


でもね

まだ

なんだかぐらぐら



鳥さんを見つけてね

ママに教えてあげようと思ったの

「ママ、鳥さんだよ」

って指さししたら

尻餅ついちゃった



痛くなかったよ

だって僕はふかふかおパンツ履いてるもん

ママはオムツと呼んでいたっけ

あれはいいよ

君にもお勧め



前に転んだ時はね

両手を地面にタッチすればいいんだよ

後ろに転んだ時は

ふかふかおパンツが守ってくれるよ




転んで恥ずかしくないかって?

恥ずかしくなんかないよ

だって

転んだら、また立ち上がればいいんだもん



君は転ぶと恥ずかしいの?

僕はへっちゃらさ

それより僕は

もっとワクワクを見つけたいんだ

もっとキラキラに近づきたいんだ




だから僕は

転んでも転んでも

また立ち上がる

そして

歩き出すんだ



ワクワクとキラキラをつかまえるために

言葉のジグソーパズル

僕は言葉がわからない

心の内を伝える

的確な言葉が



頭の中で言葉のピースを探しているうちに

人々は足早に僕の前から立ち去っていく

まだ半分も伝えていないのに



もどかしい

って

こういうことを言うのかな



一言で

的確に

表現できる

練習をしなくちゃな

君の指先

僕は君の手を握った

唐突に



僕と君は

友達でも恋人でもなかったから

そんなことは起こらないはずだった



君の白く長い手指の先が

赤く染まっていた



僕は何も考えていなかった

ただ君の悴んだ指先が

とても寒そうだったんだ



僕は何も考えていなかった

君の指先の冷たさを感じて

戸惑う自分に気付いた



君は無邪気に「あったかい」と言った

二人の手はすぐに離れた

君と僕とは

友達でも恋人でもなかったから



シルクの生地を滑らせるように

冷たさと滑らかさを僕の指先に残して

君の指先は離れていった

おもいやり

君の荷物とても大きいね

持ち上げるのも大変そうだね

毎日こんなに重いものを持ち歩いているの?

僕が持ってあげようか?

いや、僕だけじゃ無理だよ

一緒に持とう

二人で持てば少しは軽くなるだろう

なんだか心も軽くなるね



それにしても君

こんなに重いものを

毎日毎日持ち歩いて

これをどうする気だい?







「槍の使い道なんてひとつだけさ」






「え⁉」